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相対貧困率を政策指標に用いようという鳩山総理の愚

昨日の記事に引き続き、「相対貧困率」についてです。未見の方は、相対貧困率という指標を理解するを先に読んでください。

日本の相対貧困率の多寡は、世代構造の影響を大きく受ける

前述のように、相対貧困率の算出基準は「等価可処分所得の中央値の半分」となっています。

世帯数と世帯人員数の状況 - 平成19年国民生活基礎調査の概況
世帯数と平均世帯人員の年次推移
世帯数と平均世帯人員の年次推移
こちらの資料によれば、世帯人員数が減る一方で、世帯数が増えています。つまり、世代が進むにつれて世帯規模の縮小化が進み、社会全体の効用水準が低下しているのです。この傾向によって、所得から等価可処分所得へ換算する際に統計上不利な「規模の小さな世帯」が増加していることが指摘できます。

世帯主の年齢階級別の所得の状況 - 平成19年国民生活基礎調査の概況
世帯主の年齢階級別にみた1世帯当たり-世帯人員1人当たり平均所得金額
世帯主の年齢階級別にみた1世帯当たり-世帯人員1人当たり平均所得金額
さらに、「年齢」と「所得」が強くリンクしている日本の労働環境では、「団塊世代」の影響を見過ごすことはできません。日本では、人数の多い世代の所得水準が高く、さらに家族を持っている(世帯構成員が多く、統計上有利)ため、等価可処分所得の分布が高い方に引き上げられる傾向があるのです。結果、所得の中間値が引き上がり、貧困線が高く設定されます。
こうしたわけで、日本の社会構造は現状「相対貧困率が高く出やすい」構造を持っていると考えられます。

「貧困率」が出せるなら、「富裕率」も出せるはず

現在、日本の世帯所得の分布はこんな風になっています。

hinkon_huyu.jpg

等価可処分所得は元データを個別処理しないと算出できませんので、このデータは世帯ごとの総所得に基づきます。租税や手当てによる調整、基礎的消費の調整などがなされていませんので、数字は「相対貧困率」の算出に用いられたものとは異なってきますが、元データではあるので、一定の相関性を期待して作成しました。
仮に日本の世帯のうち、「所得の中間値の2倍以上」、年間900万以上の所得を得る世帯を「富裕世帯」と定義したとすると、「貧困世帯」とほぼ同等の割合で富裕世帯が存在する(オレンジ色の部分)ことになるのが、このグラフから読み取れます。

仮に、この値が世界のどの国よりも高かったとして、即「日本の富裕率は世界一」と言えるのでしょうか?マスコミはそのように報じることができるのでしょうか?おそらく、そんなことはないでしょう。「世帯収入900万程度では富裕と言えない」といった議論がなされるのでは、と思いますし、私自身、その程度で「富裕」に該当するとは思えません。何せ世帯年収900万という数字は、夫婦2人が30代サラリーマンの平均年収を確保することで達成可能な値です。日本においては、それなりの企業の正社員夫婦が共働きをするだけで「富裕層」に該当することになってしまいます。ついでに、マスコミ関係者は軒並み富裕層に該当しますね。

年収900万、これが「富裕」と呼ぶべき数字かどうか。つまりは「富裕」の定義の問題です。
同様に、3人世帯の等価可処分所得197万円、年収で言えば二百数十万前後。これを「貧困」と呼んでいいのかどうか。言葉の定義の問題ですが、なぜかこの点はメディアで論じられることなく、「相対貧困率 = 日本の貧困」という読み替えがまかり通ってしまっているのです。

相対の値を政策決定の材料に用いようという愚

これまで、「相対貧困率」という数字の意味するところ、そしてその数字を日本で算出する場合の問題点を指摘してきましたが、この値の持つ「意味」を確実に理解していないか、理解して黙殺している人が、1人存在します。

それは日本国首相、鳩山由紀夫氏です。

貧困率「ひどい数字」=鳩山首相 - 時事ドットコム
鳩山由紀夫首相は20日夜の横浜駅前での街頭演説で、2006年の相対的貧困率が15.7%だったことについて、「大変ひどい数字だ。何でこんな日本にしてしまったとの思いの方も多いだろう」と述べ、改善の必要性を訴えた。
ご説明してきたとおり、「相対貧困率」という数字は以下のような点に注意して取り扱わなければなりません。
  1. 数学的に算出した値であり、「経済的に困窮している人」の割合を示す値ではない。
  2. 資産の多寡は考慮されていない。
  3. 日本の社会構造上、所得の中間値が高く出やすい
この数字だけを見て「ひどい数字」かどうかをコメントすることは、国家のリーダーの判断としては短慮であると指摘しなければなりません。相対貧困率の数字が小さい方が良い社会であるとは一概には言えないからです。
そして、相対貧困率を「改善」することを目標に政治を行うことは、さらにひどい愚行なのです。
ちょっと簡単なモデルで説明してみましょう。

base01.jpg
上は、個人間の所得格差が均等な形で分布している9人で構成された「社会」の図です。E氏が中間値の標本となり、初期状態ではA,Bは貧困層に該当します。
このモデル社会に操作を加えて、貧困率がどう変化するかを考えてみましょう。

case01.jpg
仮に全体の所得が向上しても「相対貧困率」は低下しません。もちろんこれは「相対的な値」だからです。この社会の政府が「相対貧困率の改善」を政策目標として行動した場合、所得の向上によってA,B両氏の生活水準が向上しても、「相対貧困率の改善」という目標は達成できないことになります。

case02.jpg
政府が「相対貧困率の改善」を達成するために取り得る一つの手段は、中間値~貧困線以下の可処分所得を増やすことです。制度的な努力としては、低所得者の税率を引き下げたり、生活保護で現物支給をして所得を増やしたり、といった処置を講じて「中間値以下の格差」を少なくすることです。他のアプローチとしては、安定的な雇用の確保、最低賃金の引き上げなどによって、低位層の所得を増やすことでも「中間値以下の格差」は是正できます。

case03.jpg
しかし、「相対貧困率の改善」という目的だけ考えるならば、貧困線より上の可処分所得を削ることで、貧困線を引き下げるアプローチでも改善することができてしまいます。つまり、増税や各種手当ての廃止です。
この図ではわかりやすく中間値までを引き下げていますが、これは単純にF氏以降の中間値以上の人たちは「貧困線」の設定に関係がないからです。論理上は、序列が変わらないのであれば、F氏以降も負担を増やすことが可能です。

case04.jpg
極端に言えば、国民の半数以上が中間値の半分以内の所得に収まるならば、こういう所得構造でもいいですし・・・

case04-2.jpg
こういう所得構造であっても、相対貧困率はゼロになった、と言えるのです。
仮にベーシックインカム制度を導入し、最低受給水準から2倍以内の所得で暮らす層が50%を超えれば、貧困率はほぼ0になるでしょう。

ちなみに、今後の社会構造としてはこういうことも考えられます。

case05.jpg
現役世代の所得が向上しても、年金生活者の所得は変化しません。相対貧困率は所得に基づく数字なので、仮にリタイヤ世代の預貯金が十分にあり、生活水準に差し障りがない場合でも、現役世代の所得が増えると、貧困率が上がっていくことになります。この図のA,B,C3名の年金所得がCのラインで揃っていても、貧困率は変わらないのです。
これを是正しようとすると、社会の足並みを乱し、成長の足を引っ張ることになりかねません。


このように、国民所得間の相対的な値である「相対貧困率」の改善そのものを公言し、目標化してしまうことには大きな問題があります。相対貧困率が説明できることは「中間値以下の所得にどれだけ開きがあるか」であって、国内に存在する問題の原因ではなく、総合的な結果にすぎません。
日本国民全体の幸福を考えるならば、相対貧困率が下がるcase2よりも、相対貧困率に変化がないcase1の方が望ましいのですが、「貧困率は下げなければならない」という命題を掲げてしまうと、こういった点を誤ることにつながりかねません。

厚生労働省の官僚にしてみれば、「相対貧困率」を発表してこなかったのは、「政策的に意味がない数字だから」に他ならないでしょう。意味を見いだすならば、あわせて発表した「子どもの相対的貧困率」が子ども手当てで確実に改善されるので、子ども手当て正当化のための布石、程度でしょうか。

相対的貧困率の公表について
厚生労働大臣のご指示により

この冒頭のなげやりな一言に、すべてが現れているような気がしてなりません。
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