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2023-12

戦略性を欠いた環境政策は日本を追い込むだけ

うp主です。
今日の記事をまちがって削除しちゃいました・・・再アップです。もうしわけない。

さて、ここ最近明らかになったもっとも困った数字といえば、皆さんご存じの温室効果ガス排出量1990年比25%削減、という鳩山民主党の目標値です。

民主・鳩山代表のスピーチ全文 地球環境フォーラム - asahi.com
また、中期目標についても、温暖化を止めるために科学が要請する水準に基づくものとして、2020年までに1990年比25%削減をめざします。


しかし、鳩山民主党のCo2排出量削減目標をこのままやられても、日本国にとっては競争条件を悪化させる効果しか期待できないと考えます。
その理由を以下にご説明します。


理由1:日本は既にCo2低排出型社会のトップランナーとして独走状態だが、独歩的削減が外交的優位を生まないことは経験上明らか。

これまでも、対GDPの温室効果ガス排出量で見ると日本が世界でもっとも省エネ国家であるにもかかわらず、京都議定書のような「先駆者ほど辛い」削減割合型のルールを受け入れることになっています。日本の低排出型社会に他国が感動して追従するどころか、トップランナーに不利な条件を押し付けられ、排出権を売りつけられかけているのです。
すなわち、これ以上独走的なCo2削減を宣言しても、世界の尊敬など得られません。これは既に日本が一度経験している道であり、責任ある為政者が繰り返して良い道ではありません。

民主・鳩山代表のスピーチ全文 地球環境フォーラム - asahi.com
すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が国の国際社会への約束の「前提」となります。

鳩山代表はこのように言っていますが、現在の枠組みが排出削減量を基準にする時点で、GDPあたりの温室効果ガス排出量が「EUの62%、米国の31%、中国の8.2%」という日本の環境効率アドバンテージを捨ててしまっているのですから、そこから受けるダメージは最小限に抑える努力をするべきです。

理由2:日本が占めるCo2排出量シェアは全世界の4%であり、かつ既に世界最高効率での生産を実現している

日本の独歩的大規模削減は国内経済的にも、世界規模で見たCo2削減効果の面でもコストパフォーマンスが悪いといえます。全体のうち4%のものを例え半分にしても、全体で見ると2%の改善にしかなりません。ここに投じるコストでより排出シェアが大きく、かつ対策の進んでいない地域を改善することができれば、より大きな寄与が見込めます。(このへんは排出権取引の活用を想定しているのかもしれませんが・・・)
ようするに、日本はカラカラの雑巾の水を絞ろうとしている状況であり、まだまだ絞りようのある他国を積極的に絞りに行った方がコストパフォーマンスが高いわけです。

理由3:国際的に発表してしまえば、負担が生じてから国民が反発しても撤回が難しい。

発表してしまい、負担が生じてから有権者が「ダメだ」と判断しても、日本政府の信頼性に関わるため撤回できません。撤回できない性質のものを、戦略的に日本を富ませるしくみを盛り込まずに発表するのは愚の骨頂です。国民全体がその覚悟を持って鳩山政権を「選んだ」のでしょうか?それこそ「郵政選挙」のごとく方針そのもので信を問うことなしに、これほど大きな影響を及ぼす決定をしていいものでしょうか?
今回の選挙で民主党を支持しなかった人の中には「白紙委任状」を渡すことを恐れていた人も少なからず存在したと思いますが、その懸念を現実のものにしつつあります。


環境技術が日本の強みなのは間違いありません。これは、麻生総理も主張しましたし、うp主も同意するところです。しかし、どんな場合もそうなのですが、強みというものは戦略的に活かさなければなりません。
日本がハードル走の選手だとして、「僕は高い跳躍が武器だから」と言って、自分で自分のハードルを高くしても、競争相手を喜ばせるだけです。ハードルの高さはハードル走選手の評価基準ではないからです。


ちなみに環境問題の戦略的な利用にかけては、EUが世界のトップを独走中です。

EU:途上国の温暖化対策支援 最大2兆円の用意を表明
欧州連合(EU、加盟27カ国)の行政府・欧州委員会は10日、途上国の温暖化対策に2020年時点で年間約1000億ユーロ(約13兆3000億円)が必要になると算出し、EUとして年間20億~150億ユーロ(約2700億~2兆円)を支援する用意を表明した。EUが具体的な途上国支援額を打ち出したのは初めて。

まあ要するに、「途上国も排出権を買え!」と。そのためのカネを世界で援助してやろう、ということで、他の先進国からもカネを出させ、EUの排出権を途上国に売りつけてそのカネを吸い上げようと、御無体に言ってしまえばこういうことです。
EUは京都議定書で「過去の排出量基準」での削減割合という「環境努力の単位」を国際的に認めさせ、EU全体を一圏に見ることも認めさせた結果、旧共産圏のオンボロ工場の建て替え・改良で低コストに目標値を達成し、アドバンテージを稼ぐことができました。まこと戦略的な行動によって削減量を水増し、余剰排出権を生み出し、それを「輸出」商材にすらしていることと、今回の提案は明らかに連続性を持った戦略的行動といえます。

こんな狡猾な連中を相手にしなければならないのに、日本はといえば誰にも頼まれていないのに自分で目標をつり上げ、場合によっては他国から排出権を買ってまで数字あわせをするかもしれない、というのは愚の骨頂としか言えないでしょう。


それでは、日本が戦略的に環境技術を活かすためにはどうしたらよいでしょうか?


高い跳躍に意味が生まれるのは、高く跳んだ者が勝つルールの中でこそです。
つまり、技術的先駆者の立場を活用し、フィールドのルールを日本が有利になる方向へ誘導する舵取りが新政権には求められます。

Co2排出量の削減は、現在の枠組みでは「過去に対して何パーセント削減する」という形で縛りをかけています。こうした枠組みは産業の完成した先進国ならともかく、現在進行形で産業がグローアップしている新興国には適用できません。産業そのものの発展を抑制しないと達成できないためです。
その不公平感を廃し、より世界規模で環境配慮へ取り組むために「GDPあたりの温室効果ガス排出量」を環境努力の指標とする、つまり排出の絶対量削減ではなく経済の環境効率を問題にする枠組みへ誘導することが、この分野でトップランナーである日本を、相応の強い立場へと押し上げます。

また、こういった方針へシフトすることで、日本にはいくつかの戦略的なメリットが生まれます。
一つは、日本がトップランナーであることから「達成目標」へのハードルが低く、おそらくは将来的な余裕が生じること。目標が過剰でない分、先駆者の立場を存分に活かし、環境技術のリソースを他国への技術支援などに積極的に振り向け、外交上の「武器」にすることが可能になります。
もう一つは、「経済の環境効率」という概念が産業規模に左右されない、新興国の支持を得やすい環境努力の基準であること。先進国だけでなく新興国も環境効率向上の取り組みへ大々的に巻き込むことにより、新興諸国の設備投資において日本ブランドに絶対的アドバンテージを生み出すことにつながります。

このように、環境分野で努力すればするほど、日本の経済的価値が高まる状況を構築した上で、温室効果ガス排出削減目標を高めに設定するのならば、それは国益に合致します。

新政権には、現状の枠組みで数字上の「努力」競争をすることではなく、環境問題を戦略的に日本の価値向上へとつなげることを真剣に考えていただきたいです。



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